IT重説専任の副業に興味を持つ宅建士が増えています。しかし、ここで必ず押さえておくべき法的な大前提があります。

つまり「IT重説を副業として請け負う」には、必ず宅建業者(不動産会社)の一員として動くことが前提になります。 雇用か業務委託かにかかわらず、業者との正式な関係が必要です。

合法的に動く仕組み:従業者名簿への登録

では、どうすれば副業・スキマ時間での IT 重説対応が合法的に成立するのか。 鍵になるのが「従業者名簿への登録」です。

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宅建業者の「従業者名簿」への登録(宅建業法第48条) 宅建業者は、事務所ごとに従業者名簿を備え付け、すべての従業者の氏名・従業者証明書番号等を登録する義務があります。 ここでいう「従業者」にはパート・アルバイトも含まれます。 登録された従業者は業者から従業者証明書を受け取り、業務中は常に携帯しなければなりません(同条第1項)。
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業務委託でも名簿登録が必要なケース 「業務委託」という契約形態であっても、実態として業者の指揮命令下に置かれ、業務を担っている場合は「従業者」とみなされ、名簿登録が必要になります。 国土交通省の解釈では、契約の名称よりも業務の実態で判断されます。 IT重説専任として特定の業者の物件を継続的に担当する場合、ほぼ確実にこれに該当します。
「個人事業主×業務委託×名簿登録」というパターン 社会保険・雇用保険の加入義務がない業務委託形態を選びながら、従業者名簿への登録と従業者証明書の携帯を行う、というパターンが今後増加すると見られています。 業者側にとっても正社員採用コストを抑えながらIT重説対応を確保できるメリットがあります。
根拠:宅建業法第2条・第12条・第35条・第48条 / 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」

IT重説専任という働き方の実態

IT重説の普及に伴い、「IT重説だけを専任で担当する宅建士」というポジションが生まれつつあります。 どんな業者がこうした人材を求めているのか整理します。

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IT重説専任を求めやすい業者の特徴 賃貸仲介を多く扱う中小・零細の不動産会社が主な需要元です。 繁忙期(1〜3月)に重説件数が集中し、宅建士が不足しがちなため、スポット・非常勤での対応を求めるケースがあります。 また、首都圏・大都市圏では「遠方の顧客向けにIT重説を月数件こなせる宅建士」というニーズも存在します。
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業務形態の例 週1〜2日の非常勤勤務・1件あたりの単価制・月契約での顧問的関わりなど、形態はさまざまです。 基本的には「業者からスケジュールを連絡 → 指定の時間にZoom等でIT重説を実施」という流れで、移動がなく在宅・スキマ時間で対応しやすい業務です。
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IT重説以外の周辺業務 IT重説単体の依頼だけでなく、重要事項説明書の内容確認・資料作成補助・コンプライアンスチェックをセットで依頼される場合もあります。 IT重説1件あたりの報酬に加え、周辺業務の単価を上乗せ交渉できるかどうかが、収入の分かれ目になります。

雇用 vs 業務委託:違いと注意点

業者との契約形態として、「雇用(パート・アルバイト)」と「業務委託」の2パターンがあります。 それぞれの違いをまとめました。

項目 雇用(パート・アルバイト) 業務委託(個人事業主)
契約の根拠 労働契約法 民法(準委任・請負)
指揮命令 業者の指示に従う義務あり 原則として独立した判断で業務遂行
社会保険 一定要件を満たせば加入義務あり
(週20時間以上など)
自分で国民健康保険・国民年金に加入
所得税 業者が源泉徴収 自分で確定申告
従業者名簿登録 必須(宅建業法第48条) 実態が従業者なら必須(同上)
従業者証明書 業者が発行。業務中は携帯義務あり 同上(業務委託でも発行を受けること)
副業との相性 週数日・スポット勤務で対応可能 柔軟な時間管理が可能だが確定申告が必要
契約書を必ず交わすこと
「口約束での業務委託」は後々のトラブルの元です。業務範囲・単価・支払いサイト・守秘義務・名簿登録の取り扱いを明記した契約書を作成してください。 業者が「名簿登録はしない」と言う場合は注意が必要です。 法令上の義務を回避しようとしている業者との取引はリスクがあります。

単価の目安

IT重説専任業務の単価は、業者・地域・業務内容によって大きく異なります。 以下はあくまで市場での目安です。

業務内容 単価の目安 所要時間・備考
IT重説の実施(賃貸1件) 5,000〜10,000円 説明30〜45分。事前資料確認込みで1時間程度
IT重説の実施(売買1件) 10,000〜30,000円 売買は内容が複雑なため、説明1時間以上になることも
重要事項説明書の内容確認・チェック 5,000〜15,000円 書類の精度・項目数によって変動
重要事項説明書の作成補助 10,000〜30,000円 ゼロから作成する場合は交渉次第でさらに上振れも
月額顧問契約(非常勤宅建士) 3〜10万円/月 月あたりの対応件数・業務範囲によって変動が大きい
単価は「IT重説1件いくら」で提示するのが交渉しやすい
業者側は件数ベースのほうがコスト管理しやすいため、時給制よりも「1件○○円」の単価制のほうが合意しやすい傾向があります。 ただし、1件の業務に含む範囲(事前資料確認・当日実施のみ・事後対応まで)を明確にしておかないと単価の認識がずれやすいので要注意です。

※上記はあくまで目安であり、業者・地域・業務量・交渉力により大きく異なります。特に地方では相場が低くなる傾向があります。

IT重説専任・非常勤宅建士の案件を探す方法は大きく4つあります。

01
宅建士特化の求人・マッチングサービス

「宅建士 パート」「宅建士 非常勤」「IT重説 宅建士」などのキーワードで検索できます。宅建Jobエージェントなど宅建士に特化した転職・求人サービスでは非常勤・業務委託案件も取り扱いがあります。条件の細かい交渉はエージェントを通じて行うと話が早いです。

02
一般求人サイト・フリーランス系プラットフォーム

Indeed・タウンワーク・バイトルなどで「宅建士 パート」「重要事項説明」で検索すると、賃貸仲介会社からの非常勤募集が見つかることがあります。クラウドワークス・ランサーズ等のフリーランス系サービスでも稀に「宅建士資格保有者を探している」という案件が出ますが、現状ではまだ件数は少ないです。

03
SNS(X/Twitter)での発信・コネクション形成

宅建士コミュニティはX(旧Twitter)で比較的活発です。「宅建士 副業」「IT重説」などのハッシュタグで発信しているアカウントをフォローしたり、自分が宅建士であること・IT重説対応可能であることを発信したりすることで、業者から声がかかるケースがあります。信頼関係ができてからの紹介・契約になるため、トラブルが少ない点もメリットです。

04
地元の不動産会社への直接アプローチ

知人・知り合いが経営する不動産会社、または地元の中小不動産会社に直接声をかける方法です。「IT重説専任で対応できる宅建士を探していませんか?」と話を持ちかける形になります。つながりがあると話が進みやすく、条件面も比較的融通が利きやすいです。繁忙期(1〜3月)前の秋〜年末に声をかけると需要が高い時期に合わせやすいです。

業者との交渉ポイント

案件を獲得したら、業者との交渉で確認・合意しておくべき点があります。

  • 従業者名簿登録と従業者証明書の発行を明示的に確認する(業者に義務があることを伝え、拒否する業者は選ばない)
  • 業務範囲の明確化:IT重説当日のみか、事前の書類確認や資料作成も含むかを契約書に明記する
  • スケジュールの事前確定:当日急に依頼されるような案件は対応しにくいため、最低でも前日・前週の依頼を条件にする
  • 通信環境・機材は自己負担か業者負担かを確認する(Zoomの有料プラン費用、Wi-Fi等)
  • 守秘義務・情報管理:物件情報・顧客情報を取り扱うため、秘密保持契約(NDA)の締結を提案する
  • 支払いサイト:月末締め翌月末払いなど、支払い時期を明確にしておく
「やってみて合わなければ終わり」にできる形にしておく
副業・スキマ時間での関わりである以上、本業や生活に支障が出た場合にすぐ終了できる契約にしておくことが重要です。 契約期間・解約条項・引き継ぎ義務を事前に合意しておきましょう。

よくある疑問

宅建士証を使って副業をすると、本業の会社にバレますか?
副業先の業者の従業者名簿に登録されるため、宅建業法上の記録には残ります。ただし、それが直接本業の会社に通知される仕組みはありません。ただし、本業の就業規則で「副業禁止」の規定がある場合は別途確認が必要です。また、業務委託契約の場合は確定申告が必要になりますが、住民税の特別徴収を「普通徴収」に切り替えることで通知を軽減できます(会計士・税理士に相談を)。
複数の業者から同時に業務委託を受けることはできますか?
法律上は複数の業者の従業者名簿に同時に登録することは禁止されていません。ただし、宅建士として登録している都道府県の宅建業者への登録義務(業法第18条・22条の2)については注意が必要です。また、実務上は守秘義務・競業避止義務の関係で、同業他社を同時に掛け持ちすることを業者が嫌がる場合が多いです。契約書に競業禁止条項が含まれていないか確認してください。
宅建士証の有効期限が近い場合、更新前でも副業できますか?
宅建士証の有効期限が切れると宅建士として業務を行えません(法定講習の受講が必要)。副業を始める前に宅建士証の有効期限を必ず確認してください。有効期限の6ヶ月前から更新手続きが可能です。法定講習を受けてから更新申請をするため、余裕を持ったスケジュールが必要です。
IT重説の経験がなくても請け負えますか?
技術的には、Zoomの基本操作と重要事項説明の実務経験があれば対応できます。ただし、「IT重説の経験あり」と「なし」では業者からの信頼度が大きく変わります。まず本業の職場でIT重説を実施したことがある宅建士のほうが有利です。経験がない場合は、まずIT重説を積極的に実施している業者に正社員・パートとして入り、実績を積んでから副業・業務委託に切り替えるルートが現実的です。

まとめ

IT重説を副業・スキマ時間で請け負うには、以下の点を押さえておくことが必須です。

  • 個人が単独で「IT重説代行」を業とすることは宅建業法違反になる可能性がある
  • 必ず宅建業者の従業者名簿に登録し、従業者証明書を受け取ること
  • 業務委託でも実態が従業者なら名簿登録義務がある
  • 単価は賃貸1件5,000〜10,000円、売買1件10,000〜30,000円が目安(業者・地域により変動)
  • 契約書・守秘義務・解約条項を事前に明確にしておく

法的に正しい形で動けば、宅建士資格を持ちながら時間の融通が利く働き方として、IT重説専任は十分に成り立つ選択肢です。 IT重説の技術的な手順はまだ身につけていないという方は、まず基本の記事からチェックしてみてください。

→ IT重説の技術的な手順はこちら
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業務委託で副業を始めると、請求書の発行・インボイス対応・確定申告がすべて自分の仕事になります。 当サイトの運営母体(本町通り宅建士事務所)を個人事業主として開設した際、真っ先に契約したのが マネーフォワード クラウドです。 請求書作成・帳簿記録・確定申告・インボイス登録まで一本化できるので、副業スタート時の手続きの煩雑さを大幅に減らせました。

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