宅建士が知るべき法改正まとめ
宅建試験に出る改正から、実務で毎日使う知識まで。
2021年以降の重要な法改正を年度別・カテゴリ別に整理し、随時更新しています。
2021年の主な法改正
IT重説の対象が売買取引にも拡大
それまで賃貸借のみに認められていたIT重説(テレビ電話等を用いた重要事項説明)が、 売買・交換にも正式に認められるよう対象が拡大されました。
- 相手方の事前承諾が必要
- 双方向でリアルタイムの映像・音声確認ができる環境が必要
- 宅建士証を画面越しに提示し、相手が鮮明に確認できること
- 2022年5月の法改正による「書面の電子化」への布石となった
2022年の主な法改正
成年年齢の引き下げ(20歳→18歳)
民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。 18歳・19歳は保護者の同意なく単独で法律行為が可能になり、 未成年者取消権が使えなくなります。
- 18歳から単独で不動産の売買契約等が可能に
- 宅建業免許・宅建士登録の「成年」要件も18歳からOKに変更
- 飲酒・喫煙・競馬等は引き続き20歳が基準
- 未成年者取消権の縮小 → 消費者保護の観点から注意が必要
電子契約・電子書面の全面解禁
宅建業法が改正され、重要事項説明書(35条書面)・契約書(37条書面)・ 媒介契約書(34条書面)など、これまで書面での交付が義務付けられていた書類が すべて電磁的方法(電子署名・メール等)で提供可能になりました。
- 35条書面・37条書面・34条の2書面すべてが電子化可能に
- 相手方の事前の承諾が必要(一方的な電子化は不可)
- 電子記録の改変が困難であることが要件
- IT重説と組み合わせることで対面・書面ゼロの取引が実現
- 宅建士の記名(押印廃止・電子署名で対応)
住宅ローン控除の大幅見直し
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の仕組みが大きく変わりました。 控除率が引き下げられた一方、省エネ性能の高い住宅への優遇が拡大されました。
- 控除率:1.0% → 0.7%(借入残高×0.7%を所得税・住民税から控除)
- 控除期間:新築13年、中古10年(省エネ基準適合等の条件あり)
- 所得制限:3,000万円 → 2,000万円(合計所得)
- 借入上限:省エネ等住宅3,000万〜5,000万円(等級別)、その他2,000万円
- 2023年末までの入居分が対象(その後も延長・改正あり)
2023年の主な法改正
民法改正:相隣関係の見直し(越境竹木・ライフライン)
隣地との境界をめぐるトラブルに対応するため、「相隣関係」に関するルールが整備されました。 越境した竹木の枝の処理や、ライフライン設備の設置権が明確化されました。
- 越境竹木の枝の切除:次の3要件を満たせば土地所有者が自ら切除可能
- ①催告しても相当期間内に切除しない場合
- ②竹木所有者・その所在が不明な場合
- ③急迫の事情がある場合
- ライフライン設備の設置権:電気・ガス・水道等の導管を隣地に設置・使用する権利を法律上明確化
- 継続的給付のための設備設置は、隣地所有者に対して償金を支払うことが原則
相続土地国庫帰属法の施行
相続によって取得した不要な土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる 「相続土地国庫帰属制度」が新設されました。
- 対象:相続(遺贈を含む)で取得した土地に限定(購入した土地は対象外)
- 負担金:通常10年分の土地管理費相当額(原野・農地等は20万円が多い)
- 申請窓口:土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局
- 却下される土地:建物がある土地、担保権・使用収益権が設定されている土地、特定有害物質で汚染された土地、崖地等の管理困難な土地など
空き家対策特別措置法改正:「管理不全空家」の新設
空き家問題の深刻化を受け、空き家対策特別措置法が改正されました。 「特定空家」になる前の段階でも行政が介入できる「管理不全空家」の概念が新設されました。
- 管理不全空家:放置すれば特定空家になるおそれがある空家。市区町村が指導・勧告できる
- 固定資産税の特例喪失:管理不全空家に勧告を受けると、住宅用地の固定資産税軽減措置(1/6等)が取り消される
- 特定空家への措置(命令・代執行等)の手続きも一部簡略化
- 空き家の活用・除却への支援も強化
2024年の主な法改正
相続登記の義務化
長年問題となっていた「所有者不明土地」の解消を目的として、 不動産登記法が改正され、相続による不動産取得の登記が義務化されました。
- 申請期限:相続開始・所有権取得を知った日から3年以内
- 罰則:正当な理由なく期限を守らない場合は10万円以下の過料
- 既存の未登記:施行日(2024年4月1日)から3年以内(2027年3月31日まで)に登記が必要
- 相続人申告登記:遺産分割未了でも相続人を申告するだけで義務を履行できる簡易制度を新設
- 住所・氏名変更登記の義務化(2026年4月施行予定)も合わせて覚えておきたい
住宅ローン控除:子育て・若者世帯への拡充
少子化対策の観点から、子育て世帯・若者夫婦世帯に対する住宅ローン控除の 借入上限が引き上げられました。
- 対象:子育て世帯(19歳未満の子がいる)または若者夫婦世帯(夫婦どちらかが40歳未満)
- 長期優良住宅・低炭素住宅:5,000万円
- ZEH水準省エネ住宅:4,500万円
- 省エネ基準適合住宅:4,000万円
- 2024年に入居した場合に適用(その他の世帯は従来の上限)
日銀の利上げ:マイナス金利解除と変動金利への影響
約17年ぶりの大きな金融政策転換。日本銀行がマイナス金利を解除し、 段階的な利上げを実施。住宅ローンの変動金利に直接影響を与えました。
- 2024年3月:マイナス金利政策解除。政策金利を0〜0.1%に引き上げ
- 2024年7月:政策金利を0.25%に追加引き上げ
- 2025年1月:政策金利を0.5%に引き上げ(約17年ぶりの水準)
- 大手銀行の住宅ローン変動金利:2024年10月から相次いで引き上げ(例:0.345%→0.625%など)
- 固定金利はすでに上昇傾向。顧客への説明では変動・固定のリスクの丁寧な説明が重要に
低廉な空き家等の売買媒介報酬上限の引き上げ
低廉な空き家等は、境界確定や現地調査など通常の物件より手間がかかります。 その実費・労力に見合う報酬を確保できるよう、売買代金800万円以下の物件について媒介報酬の上限が引き上げられました。 報酬計算は宅建試験の頻出テーマです。
- 改正前:800万円以下でも通常の計算式(最大19.8万円+税)が上限
- 改正後:売主・買主 双方から、各々最大30万円(税抜)=33万円(税込)まで受領可能
- 対象:売買・交換の媒介。空き家に限らず低廉な不動産全般が対象
- 特例上限を受け取るには、売主・買主それぞれの事前承諾が必要
- 合計で最大66万円(税込)の受領が可能(売主・買主それぞれ33万円)
盛土規制法改正:特定盛土等規制区域の新設・用語変更
令和3年の熱海市土石流災害を契機に制定された「盛土規制法」(令和4年施行)が改正され、 宅建業法の重要事項説明や広告の対象として追加されました。
- 用語変更:「造成主」→「工事主」に名称変更
- 特定盛土等規制区域:宅地造成等規制区域外でも、市街地や集落に隣接する危険箇所を都道府県知事が指定可能に
- 宅建業法との連動:重要事項説明(35条)の告知対象に「盛土規制区域・特定盛土等規制区域」が追加
- 工事着手の30日前までに届出が必要(許可が必要な場合は事前申請)
建物状況調査(インスペクション)の有効期間:RC造共同住宅が2年以内に延長
既存住宅の重要事項説明で告知が必要な「建物状況調査(インスペクション)」について、 RC造・SRC造の共同住宅の有効期間が延長されました。
- 改正前:木造・RC造ともに1年以内の調査が対象
- 改正後:RC造・SRC造等の共同住宅は2年以内に延長(木造戸建ては1年以内のまま)
- 重要事項説明では「調査実施の有無」「調査結果」「調査時期(有効期間内か)」を説明する
2025年の主な法改正
建築基準法改正:4号特例の見直し(小規模建築物の構造審査が必要に)
「4号建築物」(木造2階建て以下など小規模建築物)に認められてきた 建築確認における構造等の審査省略(4号特例)が見直されました。
- 改正前の4号建築物が「新2号」「新3号」「新4号」に再区分される
- 新3号建築物(木造2階建て・延床200㎡超):建築確認で構造・省エネの審査が必要に
- 新4号建築物(木造平屋・延床200㎡以下):従来の小幅な特例が残存
- 増改築・リフォームにも影響が及ぶ場合あり
- 建築コスト上昇・工期延長につながる可能性があり、顧客への説明が必要
省エネ基準への適合義務化
全ての新築建築物に対して、省エネ基準への適合が義務化されました。 これにより、省エネ基準を満たさない建築計画は建築確認を取得できなくなります。
- 新築住宅・非住宅を問わず省エネ基準適合が必須に
- 建築確認の審査に省エネ計算書の提出が加わる
- 住宅ローン控除の「省エネ基準適合住宅」の要件とも連動
- 既存住宅(中古)には原則として遡及適用なし
- ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金制度と合わせて顧客への説明に活用
宅建業者名簿・従業者名簿・標識(業者票)の記載事項変更
宅建業法施行規則の改正により、宅建業者名簿・従業者名簿・事務所の標識 (いわゆる「業者票」)の記載事項が大幅に変更されました。 名簿・標識は宅建試験の頻出テーマです。
- 宅建業者名簿:「専任の宅建士の氏名」の記載が削除
- 従業者名簿:「生年月日」「性別」等の個人情報記載が削除(個人情報保護の観点)
- 標識(業者票)の変更:
- 削除:専任の宅建士の氏名
- 追加:宅建士の数・従業者数・事務所代表者の氏名
- 標識のデジタル表示(デジタルサイネージ)も適法と明確化
建築確認の対象拡大:都市計画区域外でも2階以上・200㎡超は必要に
建築基準法の改正により、これまで建築確認が不要だった 都市計画区域外の建築物についても、一定規模以上は建築確認が必要になりました。
- 改正前:都市計画区域外では原則、建築確認は不要だった
- 改正後:都市計画区域外でも2階建て以上または延べ面積200㎡超の建築物は構造を問わず建築確認が必要
- 全国一律での安全確保が目的
- 既存不適格建築物の増改築にも影響あり
レインズへの登録事項追加:申込みの受付状況の明示が義務化
不動産流通の透明化・いわゆる「囲い込み」防止を目的として、 レインズ(指定流通機構)への登録事項に取引状況が追加されました。
- 追加された事項:「申込みの受付に関する状況」(公開中・申込あり等)をレインズ上で常に最新状態に保つことが義務化
- 違反した場合は指示処分の対象(宅建業法施行規則の改正)
- 売主の利益を守るための改正。囲い込みによる機会損失への対策
2026年の主な法改正
区分所有法の大改正:建替え要件緩和・再生手法の多様化・管理の円滑化
老朽化マンション(築40年以上が全国約136万戸)の増加と「区分所有者の高齢化」という "二つの老い"への対応として、昭和37年(1962年)の制定以来最大規模の改正が行われました。 2026年10月の宅建試験では最重要改正として出題が予想されます。
① 建替え決議の要件緩和
- 原則は維持(5分の4):建替え決議は引き続き区分所有者および議決権の各5分の4以上が必要
- 耐震不足等の場合:5分の4 → 4分の3に緩和。建物が耐震基準・防火基準を満たしていない場合などの特定条件下
- 大規模災害の場合:さらに3分の2に緩和。災害によって被災した建物は3分の2の賛成で建替えが可能
② 建替え以外の再生手法の多数決化(重要!)
- 改正前:建替え以外(一棟リノベーション・建物敷地売却・建物取壊し等)は区分所有者全員の同意が必要
- 改正後:以下の手法が多数決(5分の4以上)で決議可能に
- 建物の全部改良決議(一棟リノベーション)
- 建物敷地売却決議
- 建物取壊し敷地売却決議
- 建物取壊し決議(区分所有関係の解消)
- 特定条件下ではさらに4分の3に緩和(3分の2:大規模災害時)
③ 所在不明区分所有者への対応
- 議決権の分母から除外:所在不明・連絡不能の区分所有者は、裁判所への申立てにより決議の母数から除外可能
- 建替え決議を含むすべての決議が対象
- これにより、事実上の決議要件が緩やかになる効果がある
④ 特別決議の仕組みの変更
- 分母の変更:「全区分所有者」から「集会に出席した区分所有者」ベースへ変更
- ただし定足数の確保が前提(区分所有者および議決権の各過半数が出席)
- 出席者の4分の3で特別決議が成立するケースが生まれる
⑤ 管理の円滑化(新制度)
- 国内管理人制度:区分所有者が海外居住の場合、管理組合との連絡窓口として国内管理人の選任が義務化
- 管理不全専有部分管理人:管理を怠る専有部分について、利害関係人の請求により裁判所が管理人を選任できる
住所・氏名変更登記の義務化
2024年施行の相続登記義務化に続き、引越しや結婚等による住所・氏名の変更についても 登記申請が義務化される予定です。
- 申請期限:住所・氏名の変更から2年以内に変更登記申請
- 罰則:正当理由なく怠ると5万円以下の過料
- 相続登記の義務化(2024年4月〜)とセットで覚えておきたい
- 所有者不明土地問題の解消策の一環
※ 本ページの情報は2026年3月現在の内容をもとにしており、その後の法改正・通達等により内容が変わる場合があります。実務においては必ず最新の法令・国土交通省・法務省等の情報をご確認ください。